#歯科コラム 2025.10.10

歯ぐきからのSOS 〜知っておきたい歯周病の話〜“治す”より“守る”時代へ — 予防歯科のススメ

むし歯(う蝕)についての基本的な知識

成人のむし歯(う蝕)について

う蝕は、プラーク中の細菌(ミュータンス菌、ラクトバチラス菌など)の感染により起こります。
細菌は、イン色した食べ物から栄養を取り、酸を作ります。この酸によってはが溶かされてしまった状態がう蝕(虫歯)です。
人間のからだには、この酸と闘おうとする抵抗力があり、人によって程度の差はありますが、唾液や歯の質などがその力です。
しかし、酸にさらされるる回数が多かったり、時間が長かったりすれば、酸との戦いに敗れ、う蝕になってしまいます。
つまし、細菌とからだの抵抗力の戦いともいえるのです。

歯頚部のう蝕が起きやすい

歯周病やブラッシンングの過剰な圧力のかけすぎなどにより、歯肉の退縮が起きると象牙質が露出してしまい、冷たいものやブラッシングでしみたりすること(知覚過敏症)が起こります。また、象牙質は、エナメル質よりも酸におかされやすいためにう蝕になりやすいです。

むし歯(う蝕)になる高リスクな原因

①食事回数の多い人
②のど飴などのアメを常用している人
③唾液分泌量の極端に少ない人
 ・腺分泌抑制剤の投与を受けている人
 ・放射線治療の結果、唾液腺に障害を生じた人
 ・手術により唾液腺を摘出した人
 ・その他、唾液の分泌の低下を伴う疾病の人(たとえば、シェーグレン症候群など)
④歯周病治療後のプラークコントロールが不良の人

歯根露出部におけるう蝕(歯頚部う蝕)の発症において留意しなければならないことは、エナメル質う蝕とは異なり、弱い酸でも脱灰が生じる点です。エナメル質の脱灰はpH5.5以下で生じると言われていますが、根露出部の象牙質においては、pH6.2程度であると言われています。

日々のお手入れの重要性

メインテナンスの目的

メインテナンスは、持続的なバイオフィルムの破壊と除去を行って治療によって得られた口腔内の健康な状態を維持させ、再発を防止することを目的としています。具体的には、歯周ポケット内の歯周病原菌であるグラム陰性菌群は、処置した後12〜16週で、元の細菌叢に戻る傾向があります。
そこで、細菌の量が悪影響を起こし出す前に、プロフェッショナルバイオフィルムコントロールを行って、歯周病の再発を予防するために、その人の歯周環境に応じた、今後のメインテナンス・プログラムを決定していきます。

メインテナンスの期間

メインテナンス間隔は、個人それぞれの口腔内の状況にそって間隔が指定されます。この間隔はだいたい3ヶ月とされていますが、再評価やプラークコントロールの程度によって、短くなったり、徐々にのばされたりします。メインテナンスを定期的に行わなければと、確実に歯周病は進行したり、再発していきます。メインテナンスは一時的だけ行うものではなく、大切なことは、ずっと無理なく続けていくことです。

細菌と抵抗力

ミュータンス菌

う蝕を引き起こす病原性が最も強い細菌は、縁上(歯肉より上の部分)プラーク中に多く存在するミュータンス菌Mutans streptococcuciです。
この菌は、紙面に対して強い付着能を持っているため、やがてコロニーをつくり、低いpH環境の中でも存在し、酸を産生します。
脱灰の初期に重要な役割を果たすと考えられています。

ラクトバチラス菌

もう一つの強いラクトバチラス菌は、付着能を持っていませんが、定着できる”すみか”があると増殖を起こし、しばしばう蝕の深部に見られることから、脱灰の後期に重要な役割を果たすと考えられています。口腔環境が不良であればあるほど増殖することから、その量を知ることで口腔環境や食習慣を客観的に評価できるといえます。

予防歯科パンフレット